知的障害者が介護職員に 初任者研修で人生が一変(明光会・静岡)

水分補給介助をする布留川さん

静岡市の社会福祉法人明光会(寺田亮一会長、寺田千尋理事長)の就労継続支援B型事業所の利用者だった布留川昭洋さん(52)は、2017年に同会が行う介護職員初任者研修を修了し、入所施設の介護職員として働いている。研修をきっかけに布留川さんの人生は一変した。同市内で障害関係19事業所を運営する明光会の支援のたまものだった。

前の職場で嫌な目に遭い、人と話すのも難しい状態でB型事業所を利用するようになった布留川さん。一般企業からの請負作業や法人内の清掃作業を行う中で徐々に状態が良くなり、その後、就労継続支援事業所に行き、研修を受講した。

研修は、ふりがなが付いた外国人向けテキストや、イラストを使った補助教材などを使い、知的障害者でも分かりやすいように工夫されており「講師のサポートで資格が取れた」と布留川さん。

資格取得後は、就労移行支援事業所や相談支援事業所のサポートを受けつつ、入所施設で介護業務を経験。19年に正式な介護職員になり、今はグループホームで生活しながら、正午から午後9時までの遅番を担当している。仕事の内容は、服薬支援など一部を除くすべての業務を担当する。月額賃金は、B型事業所の10倍以上の17~18万円に増え、映画や買い物を楽しむゆとりもできたという。

「仕事は覚えるまで大変だったが、今は利用者の個性を理解して仕事をしている。『明日は来るの』などみんなが声を掛けてくれるのでうれしい。B型事業所の時よりずっと楽しい」と話す。

人生を一変させた研修は、介護現場への就労を希望する障害者を支援するために、静岡県が02年度から県社会就労センター協議会に委託し、県内5地区(定員=各地区10人程度)で行っている。

明光会は16年度から中部地区を担当しており、この7年間で64人の資格取得を支援してきた。このうち14人は、明光会の就労継続支援A・B型事業所や就労移行支援事業所の利用者で、3人が他法人の介護施設や病院に就労し、2人が法人内の施設で介護職員として働いている。

寺田会長は「布留川さんは、刻み食など個々の利用者の食事形態も覚えており、どんな仕事も嫌な顔一つ見せずやってくれる。介護の仕事が天職のようで、法人にとっても大きな戦力になっている。研修はチャレンジの機会であり、介護の仕事に就かなくても資格が取れれば自信になる。利用者の選択肢を広げるのに大いに役立つ」と話している。